1943年生まれ。工学博士。 |
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いわゆる在来工法、すなわち柱と梁で軸を組む木造軸組工法は、日本特有の気候風土のなかで生まれた建築工法で、その耐久性・耐震性は鉄やコンクリートの建物に引けを取らないと考えられてきました。
現在、全国の木造住宅約2400万棟のうち7割前後に在来工法が採用されています。ところが阪神淡路大震災では在来工法の住宅に被害が集中し、多くの被害者を出しました。地震に強いはずの木造住宅が何故たくさん倒壊したのか。
それは建物としての 『重心と剛心』(*下記注1) がズレた家屋が多かったからです。この重心と剛心のバランスがとれていれば、家屋の耐震性もきわめて高くなります。本来、木造住宅はそれを持ち合わせているのですが、近年、住まいとしての快適性や経済性を重視しすぎてこのバランスを崩してしまっている家屋が多いのです。最近になって、新築住宅については、建物としての性能評価の基準が法的に決められることになりましたが、言い換えれば、既存の木造住宅のほとんどは構造的なチェックを受けていないということになります。
とはいえ阪神淡路大震災を教訓に木造住宅の耐震性能について多くの事が解明され、現在では、的確な耐震診断に基づく的確な耐震補強を施しさえすれば、古い木造住宅でも新築なみの耐震性が確保できます。また、地震に強い街づくりネットワークのように、現場での経験を踏んだ上で、耐震診断や耐震補強を広めていこうという専門家集団も現れています。家づくりには、住み手と技術者の協力はかかせません。素人の判断で自分の家が大丈夫だと決めつけないで、きちんとした耐震診断を受けて欲しいと思います。